書いて消した文面のなかにいた僕

「お久しぶり、最近どうしてるの?」

そう打ち込んだメッセージを、僕は消した。

何を躊躇ったのか、並べてみる。

「今、連絡しても大丈夫かな」
「しばらく連絡を取っていなかったし…」
「向こうからも連絡はなかったしなぁ…」

これって、相手への気遣いなのだろうか?

もし、これらの理由が自分を守るためのもの
だったとしたら?
僕は、いったい何を守ろうとしているのだろうか…

僕はたぶん、メッセージを送らなければ、
今の関係は変わらないと思っている。
しばらく連絡していなくても、
連絡を取り合っていた頃の関係が、
今も続いていると思い込もうとしている。

そんなはず、ないのにね。
連絡を取り合う相手から、
連絡を取り合わない相手になったのに。

連絡を取らなくなってから、
君を取り巻く環境も、
僕を取り巻く環境も変わった。

関心のあること。
悩み。
周りにいる人たち。

何もかも、あの頃と同じではない。

それでも、君との関係だけは、
あの頃のままだと期待している。

そして、今の僕を君はどう思うのだろうか…
今の僕を君が知らなければ、君の中で僕は、
あの頃のままでいられる。

そう思っているのかもしれない。

本当に壊したくなかったのは、君の中の僕だった。
その代わりに失ったのは、今の君とつながること…

でも、君の中の僕が変わってしまうことを、
僕はそんなに恐れているのだろうか。

違う。
壊したくなかったのは、今、僕の中に存在している君…
一緒に笑って、騒いで、泣いた君を失うことが怖い。

…ううん、違う。
失くしたくなかったのは、あの頃の二人の関係。
でも、その関係はもう、記憶の中にしか存在しない。

もう一度会うから消えるのではない。
もうすでに、現実には存在していない。

それなら、もう恐れることはないはずだよね…

もう一度、同じ言葉を打ち込む。
今度は、消さずに送信できるよね…?

君と、もう一度……
……ではなく……

どうしてだろう、送信ボタンに指をかざすと、
このメッセージが繋げるのは、
「あの頃の僕たち」ではなく、
これから新しい関係を築いていく僕たちなのだと
感じてしまうのは…

たとえ君の言葉も、反応も、仕草も、
完璧に「あの頃の君」と同じだったとしても、
僕は満たされないような気がして…

だって、君がもう、
「あの頃の君」ではないのと同じように、
僕ももう、「あの頃の僕」ではないから…

それでも、メッセージを打ったのは…
どうしても、思い出してしまうから。
求めてしまうから。

無邪気だった、あの頃の僕たちを…

いつか、このメッセージを送れたら、
僕はここから進むことができるのでしょうか。

僕は、そう望んでいるのでしょうか…

打ち込まれたメッセージを見つめる。
そのままスマホの画面を消して、
ポケットにしまう。

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